緒方へ
よう、久しぶり!
今日は二度目のお墓参り。
緒方を思い、開発した「お墓マイル」が完成したことを理由に、久留米駅のそばに住む同
級生の案内で、はじめて緒方家に行った。
90歳近いご両親は、まだ矍鑠としていて、私たちを迎えてくれた。
大学一年で亡くなった緒方は、中学の頃から僕の憧れだった。あくせく生きて、うだつの
上がらない私を横目に、飄々と学生生活を通り抜けていた。
大学を選ぶ際、広いところで学びたいという、唯それだけで彼は北海道に行った。きっと
陰では努力していたのかもしれないが、シャイでそう言ったところを見せない彼は、僕の
見る限りで、のびのび遊び続け、楽々と医学部に行った。足は速く、マラソンは一年の頃
から全校一位、いつも最初に帰ってくる彼を、みんなで受け入れた。
笑顔が強烈で、僕がなんだかふさぎ込んでいると、「なんしとーとや?」とからかうよう
に元気づけてくる。僕だけではない多くの同窓生が彼に元気づけられたと思う。
そんな話をご両親にすると、本当にうれしそうに微笑んだ。
改めて、私がお墓参りに行きたいと言うと、案内していただく事となった。
お墓につくと、掃除が始まった。昨日掃除したかのような奇麗なお墓を、また丹念に掃除
していた。
僕はと言うと、お墓を前にして、まだあくせくしている自分が恥ずかしくなった、50才過
ぎても背伸びして何とか生きている自分を恥ずかしく思った。
緒方が生きていれば、今でも飄々と「緑間なんしとーとや?」と聞いてくるのだろう。
お墓を通じて、緒方にからかわれたような気がした。
会いたいな、生きていたらどれだけ楽しかったかな。40年も前の事なのに彼のしゃがれた
声の色まで覚えている。くしゃくしゃにした笑顔で話しかけて来る彼がはっきりと思い出
せる。
掃除を終え、お参りを終え、お墓を背にした。
歩き始めたその時、「緑間~」あの声で呼びかけられた。
振り返ると青い空に「緒方家の墓」がはにかんだように笑っていた。
やっぱりあいつらしいな、お墓参りに来て良かったな、と。
そして、僕はと言うと、背筋を伸ばして、また無理して大股で歩き始めた。
緒方、また来るけん!