「愛妻のお墓」

 

 先祖代々のお墓は東京上野にありますが、私はお墓参りに行ったことがありません。

 代を重ね、時代や仕事の関係でさまざまな土地に移り住み、現在は身内のほとんどが関西にいます。そのため、兄が関西に新しくお墓を建てました。

 

 私は第4子のため、夫婦で相談して墓地を買い、いつか墓石を建てようと思いながら長い月日が経ちました。

 妻が体調を崩し入院を繰り返すようになった頃、そのままになっている墓地をどうしようかという話になり、最近は墓じまいをする人も増えてきているときくし、孫たちも東京で働いているしと、いろいろ相談をして墓地を解約することにしました。

 それから1年ほどして昨年夏に妻は亡くなりました。

 子どもらと遺品整理をしていたとき、妻のノートに「今日お墓を解約した。嫌な気持ち・・・」

と書いてあったのを見つけてみんなびっくりしました。妻はてっきり同意してくれていると思っていたからです。しかし、よく考えてみるとお墓参りを欠かさない妻でしたから、先祖をお墓を大切にする気持ちが人一倍あったのでしょう。

 それから「お墓を建てよう!」と家族で決めてからは早かったです。さまざまな墓地を調べ、見学を繰り返して墓地を決め、妻の好きだった薄いピンク色の墓石を選び、東京にいる美大出の孫がデザインしました。

 これは子どもたちと行った1周忌のお墓参りの写真です。一生懸命顔をきれいにしながら、目頭が熱くなる思いでした。こうして眺めるとモダーンでユニークな、いつでも会いに行きたくなるようなお墓です。亡き妻もさぞかし喜んでくれているだろうと思っています。東京にいる孫たちはコロナ禍のため参加できませんでしたが、今春初めてできたひ孫も一緒にいつか家族全員揃って妻に会いにいきたいと思います。

 

 また、10年ほど前に娘が上野のお墓参りに行ってくれました。スカイツリーが見えるところで、黒光りした時代を感じるお墓だったということです。それ以来、東京に行く際には必ず行ってくれています。

 孫たちの拠点が東京に移ったのも、何かの縁かもしれないと思っています。